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補助事業番号  2018M-162

補助事業名   平成30年度 軟弱地盤への振動伝播と締め固め効果を利用した脚型ロボットに関する研究補助事業

補助事業者名  芝浦工業大学システム理工学部 飯塚浩二郎

 

1 研究の概要

   砂のような軟弱地盤上を移動する際, 脚型ロボットや車輪型ロボットなどの移動形態は滑り現象や沈下現象を起こし, 走行性能を著しく悪化させてしまう. 東日本大地震や広島の土砂災害などにおいて, 泥水等が市街地などに流れ込み, 災害救助のために移動するための地盤は緩い状態、つまり軟弱地盤状態となってしまった. 本申請者は, そのような軟弱地盤(模擬的に砂を使用)に対して, 2自由度の単脚ロボットの先端(足先)に振動デバイスを搭載させ, 軟弱地盤への接触実験を行なった. この実験から脚先と地盤との接触付近は, 振動伝播の効果により支持力が上昇し(砂の硬さ・せん断強度が上昇), 滑り現象が低減したことを確認している(振動伝播の有無で大きな差を確認). そこで, 振動現象によって引き起こされる粒子群の高密度化現象を利用して, 走行中の地盤をピンポイントで締め固め, 移動に必要な反力を引き出すことを狙う. 特に本研究では滑り, 沈下が起きやすい脚型ロボットに着目し, 振動伝播と締め固めによってその走行性を促進させる画期的な提案である. 脚型ロボットは, 自由度が多いことおよびいろいろな姿勢を取ることが可能なことなど, 大変走行性能が高い. しかし地盤の緩い状態で走行すると滑りや沈下現象を起こしてしまい, 脚型ロボットの良さを引き出せない. 本事業は, 脚型ロボットの弱点克服および性能の促進を目指すものである. 具体的には研究では, 脚型ロボットの先端に振動子を搭載させたハードウェアの試作, そして, 締め固め量測定(せん断強度の測定)および走行試験を行い, 脚型ロボットの振動伝播による締め固め効果の実証を行う.

 

2 研究の目的と背景

   脚型ロボットのような先端面積が小さい移動形態が軟弱地盤走行を走行する際, 滑り現象および沈下現象が起きてしまう. この難しい環境において, 振動および振動停止後に起きる砂粒子群の高密度化現象に注目した. 実際に2自由度の単脚ロボットの先端(足先)に振動デバイスを搭載させ, 軟弱地盤への接触実験を行なった. この実験から脚先と地盤との接触付近は, 振動伝播の効果により支持力が上昇し(砂の硬さ・せん断強度が上昇), 滑り現象が低減したことを確認している(振動伝播の有無で大きな差を確認). この方法を拡張させることにより, 軟弱地盤移動時に画期的に性能を発揮できる脚型ロボットを開発できるのではという考えに至った.

そこで, 本事業では, 脚型ロボットの軟弱地盤移動において, 振動伝播および締め固め効果を利用して, 脚型ロボットの革新的な移動手法を確立し, 振動伝播と移動の関係を明確にすることを目的とする. 具体的には, 振動デバイスを搭載した脚型ロボットを試作し, 振動伝播におけるパラメータ(振動周波数など)を設定し, 移動実験を行う. 実験に得られた結果から, 振動伝播と移動の関係を導出していく.

 

3 研究内容

   振動伝播デバイス搭載型多脚ロボットの開発

 

  単脚ロボットから多脚ロボットへと展開して,実際の移動を実現させることを狙う. 古くから多脚ロボットの歩行(歩容)については研究されている.本事業では歩容という観点では新しい要素はないため, 古くから行われている歩容をもちい, この歩容に振動伝播+停止というシーケンスを組み込んでいく.歩容はウェーブ歩容を参考に一歩ずつ前に出していく. その歩容の中で,(1)脚を上げて前方に移動させる, (2)次に脚を下げるタイミングで振動させる, (3)このとき振動により脚部は積極的に沈下を引き起こす, (4)最後に脚を下げて, 砂に振動を与えた後, 振動を停止させる. この振動励起と振動停止により砂のせ

ん断強度が上昇する.

この歩容を実際に行うために,振動デバイス搭載型の多脚ロボットを製作した(図1). 確実な安定領域を確保するため脚数を6本としている. 大きさは, 高さ約200mm, 幅約200mm, 長さ約300mmである. 脚の動作用モータは, KRS-2572HV ICS(近藤科学株式会社)を, 振動用モータ(偏心モータ)にはTP-2528C-24(スリーピース社)を採用した.  

 

 

 

 

                                           

 

図1 振動デバイスを搭載した提案多脚ロボット

 

   振動停止を用いることによって, 斜度20度について歩行することが可能となっており, 振動・締め固めによる有効性が示されている. また, 振動なしと比較すると斜度歩行時は, 振動要素を用いることで高い歩行性能が示されている. 以上のことから, 振動・停止機能を持たせた脚型ロボットは, 軟弱地盤走行に大変有効であると言える.

 

4 本研究が実社会にどう活かされるかー展望

   本研究の成果は不整地移動, 特に地盤のゆるい移動方法の画期的な提案である. このロボットの特徴を生かし, 宇宙探査ロボットに加え, レスキュ活動の2次災害防止用地盤調査ロボットとして, さらには農作業ロボットとして展開することを狙っていく.

 

5 教歴・研究歴の流れにおける今回研究の位置づけ

      今回の研究は, 自分自身の研究成果から得られたニーズを広げたものである. 

6 本研究にかかわる知財・発表論文等

 

学会名:ロボテクィクス・メカトロニクス講演会2018
場所:北九州
日時:2018年6月2〜5日
講演タイトル:軟弱地盤における振動を用いた脚型機構の移動方法に関する研究
著者: 渡邉智洋, 飯塚浩二郎(芝浦工大)

 

学会名:SICE中部支部シンポジウム2019
場所:長野
日時:2018年9月24日
講演タイトル:振動伝播を用いた脚型探査ローバのスリップ抑制歩行の提案
著者: 渡邉智洋, 飯塚浩二郎(芝浦工大)

 

学会名:ロボテクィクス・メカトロニクス講演会2019
場所:広島
日時:2019年6月5〜8日
講演タイトル:振動伝播を利用した脚ロボットの軟弱地盤移動性能に関する実験的研究
著者: 渡邉智洋, 飯塚浩二郎(芝浦工大)

 

学会名:ISTVS2019
場所:チェコ(プラハ)
日時:2019年9月8日~11日
講演タイトル:STUDY ON LEGGED TYPED ROVERS WITH FUNCTION OF VIBRATIONSTOP TO TRAVEL ON LOOSE SOIL
著者: 渡邉智洋, 飯塚浩二郎(芝浦工大)

 

学会名:関東学生会第59回学生員卒業研究発表講演会

場所:東京

日時:2020年3月16日

講演タイトル:振動伝播を用いた月・惑星探査脚型ローバの脚形状検討  

著者: 黒沼慈, 渡邉智洋, 飯塚浩二郎(芝浦工大)

 

7 補助事業に係る成果物

特になし

 

8 事業内容についての問い合わせ先

所属機関名: 芝浦工業大学システム理工学部飯塚研究室

住   所: 〒337-8570(半角)

              埼玉県さいたま市見沼区深作307

申 請 者: 教授 飯塚 浩二郎(イイヅカ コウジロウ)

担当部署: 機械制御システム学科(キカイセイギョシステムガッカ)

E-mail:   iizuka(アットマーク)shibaura-it.ac.jp

URL : http://cozzydora.wixsite.com/iizuka-lab

補助事業番号  28-147

補助事業名   平成28年度 可変ホイールベース長と沈下現象を利用した軟弱地盤移動機構の開発 補助事業

補助事業者名  芝浦工業大学システム理工学部 飯塚 浩二郎

 

1 研究の概要

 

  砂のような軟弱地盤上を移動する機構として本研究開発事業が行われている. 特に斜面走行では自重にかかる重力項の影響で滑りが発生し, それに伴う沈下が起きてしまう. 本研究開発の特徴はこの沈下現象を利用して車輪間距離を変更することで移動を可能とさせるものである. また, 斜度を変更させた走行試験から, ホイールベースを変更することにより走行性能が大幅に向上することがわかった. これからの結果からセンサ等を組み込んだテストベッドとして改めて設計・開発した.

 

2 研究の目的と背景

 

  土砂災害のよる地盤, 津波による地盤, あるいは月面は共通した一面を持つ. それは地盤が舗装された硬い地盤ではなく, ゆるくせん断現象が起きる地盤である.このような地盤を車両や車輪型の走行系が走行すると滑りや沈下を起こす. つまり走行不能現象に陥ってしまう. 災害活動や新たな活動拠点の探査を行うためにこの課題を解決するため新しい移動機構の開発に挑戦する.

 

3 研究内容

   砂のような軟弱地盤上を移動する機構として本研究開発事業が行われている. 特に斜面走行では自重にかかる重力項の影響で滑りが発生し, それに伴う沈下が起きてしまう. 本研究開発の特徴はこの沈下現象を利用して車輪間距離を変更することで移動を可能とさせるものである. 本事業で開発したホイールベース可変機構を用いたロボットを図1に示す. また, 斜度を変更させた走行試験から, ホイールベースを変更することにより走行性能が大幅に向上することがわかった. 走行の様子(動画)を図2に示す. これからの結果からセンサ等を組み込んだテストベッドとして改めて設計・開発した.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                     図1 本事業で提案しているホイールベース可変移動ロボット

 

 

 

 

 

 

                     図2 本事業で提案しているホイールベース可変移動ロボット(動画)

4 本研究が実社会にどう活かされるかー展望

  車輪型の移動体, つまり現在の自動車や将来的な自動移動ロボットは, 構造のシンプルさ, 走行効率の良さから今後も利用されていくだろう. しかし, 前述したように人間が舗装した道路の走行に適している. そういった中, 本研究成果は不整地移動, 特に地盤のゆるいところの移動方法となる. 前述したレスキュ活動以外に, 自動車が未舗装道路へ侵入できることや電動車椅子に搭載させて, 移動場所の拡大をはかることもできてくるだろう.

5 事業内容についての問い合わせ先

所属機関名: 芝浦工業大学システム理工学部飯塚研究室

                    [宇宙探査・テラ-メカトロニクス研究室]

住   所: 〒337-8570(半角) 埼玉県さいたま市見沼区深作307

申 請 者: 教授 飯塚 浩二郎(イイヅカ コウジロウ)

   担当部署: 機械制御システム学科(キカイセイギョシステムガッカ)

      E-mail:   iizuka(at)shibaura-it.ac.jp

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